飯田橋駅 中央線ホーム移設工事 (1)概要、ホーム
飯田橋駅における列車とホームの間の隙間を解消するため、中央線ホームの三鷹寄りへの移設や西口駅舎の建て替えが行われ、2020年7月に供用が開始されました。本ページでは移設工事の概要に加え、約200m移設されたホームについて紹介しています。
概要
背景
飯田橋駅の中央線ホームは曲線半径300mの急曲線上に設置されていたため、列車とホームの間に最大33cmの隙間が発生していました。転落対策として下り列車に対しては駅員による乗降終了合図が行われていた他(上り列車は駅員の立会のみ)、転落防止マットや回転灯(写真左 ホーム下)、警報器(後述)が設置されていました。
一方で三鷹寄りの旧牛込駅付近には緩行線用の引上線がありましたが、撤去後は更地となっていました。今回の工事では大きな隙間を抜本的に解消するため、この部分の一部にホームが移設されました。
内容
土木・建築は鉄建建設・前田建設工業JV、軌道は東鉄工業が担当しました。
ホームの移設、低下
三鷹寄りに約200m移設し、列車とホームの間の隙間が大幅に解消されました。移設先には急勾配があったため、ホーム設置基準に合わせて旧ホームの一部を低下させる工事が移設前から行われました(後述)。これに伴い、飯田橋駅付近の緩行線では徐行運転が行われました。
西口駅舎の建て替え
新駅舎は鉄骨2階建てとなり、千代田区と連携して約1,000平方メートルの駅前広場も整備されました。建て替えに際しては千代田区立飯田橋児童遊園の跡地を利用し、2016年から新駅舎供用前日までの間仮駅舎が供用されました。
ホームの低下
新ホームの設置場所には最大33パーミルの急勾配があったため、ホームの設置基準に合わせて線路や旧ホームを低下させ、最大18.5パーミルまで緩和(※)させる工事が行われています。工事は終電後の線路閉鎖を実施して以下の順番で行われ、1日当たり約50m、最大80mmを目安として行われました。
- ホーム:約100m(最大492mm)
- 下り線:約190m(最大528mm)
- 上り線:約160m(最大425mm)
※ホーム設置基準は10パーミルだが、移設区間前後の高さなどが考慮されていることから、社内整理により許容
この工事期間中は仮ホーム化、油圧ジャッキの配置が行われ、転落防止マットのレーザーセンサーによる代替や45km/hの徐行運転も行われました。低下工事は57回(線路)、35回(ホーム)に渡り、1年1ヶ月を要しています。
外堀跡への配慮
新ホームの一部は国指定の史跡「江戸城外堀跡」に設置されるため、第三者の有識者で構成される委員会が開催されました。文化庁との協議も重ねられ、支障範囲を最小限に抑えながらの工事となりました。
工事の終了後、新西口駅舎に江戸城外堀の史跡を紹介する展示が設置される予定となっており、2021年3月以降に順次供用が開始されました。
移設直後の様子
撮影日:2020年7月12日
新ホーム
旧ホームと同様に上り線(千葉方面)側が1番線、下り線(三鷹方面)側が2番線となっています。
新ホーム付近の曲線半径は900mのため、列車とホームの間の隙間は最大33cmから15cmまで解消されました。新ホームからは外堀、東京理科大学 神楽坂キャンパスなどを眺めることが出来ます。
なおホーム上の点字ブロックはホームドアの設置を考慮したものとなっていますが、現時点では設置の準備工事は行われていません。(飯田橋駅は2022年夏頃の整備予定駅)
1号車付近には西口仮駅舎への階段が設置されていましたが、新駅舎の供用開始に伴い一部が撤去されました。なお7月12日の新駅舎供用開始に先立ち、西口仮駅舎は前日(11日)の23時に営業を終了しています。
新ホーム上の駅名標、案内看板は全て非電照式となりました。また発車標は1段に10桁が表示出来る24ドット×2段のLED式となっており、左側から行先(6桁)、発車時刻(4桁)の構成となっています。在線は3駅手前(1番線:信濃町、2番線:秋葉原)から表示されます。
ホーム三鷹寄りの先端からは、緩行線の上り列車を撮影することが出来ます。
停止位置目標は、上下線ともに進行方向左側に1ヶ所のみ設置されています。2番線では上り急行線側から乗り出す形で設置され、柵に「停目」(=停止位置目標)と書かれていることが確認出来ました。
またホームの移設に伴い、緩行線の以下の信号機では設置場所の移設などが行われました。
- 下り線(三鷹方面) 第25閉塞信号機
ホームの移設後、中継信号機がホームの手前からホーム上千葉寄り(旧1号車付近)に移設された。 - 下り線(三鷹方面) 第24閉塞信号機
1号車(西口仮駅舎)付近から、新西口駅舎へのエスカレーターがある4号車付近に移設(移設前と同様3灯式)。この第24閉塞信号機に対する中継信号機が、東口への通路(旧10号車付近)に設置された。 - 上り線(千葉方面) 第4閉塞信号機
牛込橋西側直下の7号車付近から、新西口駅舎への階段がある3号車付近に移設。(移設前と同様、減速現示が可能な4灯式)
ホーム上のITVは、近年各駅で整備が進められている縦型の高解像度のモニターとなりました。旧ホームにて下り列車に対し行われていた乗降終了合図が廃止されたため、両方向とも車掌用として最後尾の1ヶ所のみに設置されています。
旧ホーム
旧ホームは引き続き新ホームから東口への通路として利用出来ますが、階段、エスカレーターを境に千葉寄りは閉鎖されました。閉鎖部分を除き、ホーム上には柵が設置されています。訪問時点では、旧ホーム上のITVは全て通電していました。
なおこの付近では前述の通りホームの低下工事が行われたため、工事前に比べ線路、ホームの位置が低くなっています。
旧ホームから東口に向かう階段、エスカレーターは2ヶ所ありましたが、ホーム移設後は千葉寄りの階段、エスカレーターが閉鎖されました。今後、エレベーターが設置される予定となっています。
またこの付近のみ移設前に使用されていた発車標(16ドット×1段、8桁)が引き続き使用されていますが、スピーカーは使用停止となっています。(西口仮駅舎付近の発車標は使用停止済み)
旧ホーム上の駅名標、案内看板は、電照式のものがそのまま使用されています。
転落対策として設置された設備
旧ホームの8号車付近には駅事務室があり、駅員が付近に設置された合図器、ITVを利用して下り列車の乗降終了合図や上り列車の立会を終日行っていました。新ホームの供用開始に伴いこの取り扱いは終了し、合図を行っていた場所は閉鎖されました。訪問時点で合図器やITVはそのまま残っており、三鷹寄りの自動販売機も使用可能となっていました。
なお低下工事に伴い、自動販売機側と合図器側で段差の高さに違いが生じています。
この他旧ホーム上には警報器(※)、ホーム下に設置された転落検知マットの検知状況を表示するLED表示器が設置されていました。訪問時点では警報器のみビニールで覆われていましたが、LED表示器はそのままとなっていました。
※停車中にチャイムとともに、「足元」「注意」を交互表示する
参考文献
- 東日本旅客鉄道株式会社「JR中央線飯田橋駅ホームにおける抜本的な安全対策の着手について」
https://www.jreast.co.jp/press/2014/20140702.pdf 最終閲覧日:2020年9月14日 - 東日本旅客鉄道株式会社東京支社「飯田橋駅がより安全に、より便利になります~新ホーム、新西口駅舎および歩行者空間の供用開始について~」
https://www.jreast.co.jp/press/2020/tokyo/20200616_to02.pdf 最終閲覧日:2020年9月15日 - 「ホーム200m移設、新駅舎7月12日開業 JR中央線飯田橋駅改良」
『建設通信新聞』、2020年6月23日 - 「前例のない軌道・ホーム低下工事 JR東日本の飯田橋駅改良」
『建設通信新聞』、2020年7月28日 - 「新西口駅舎は来秋着工 9月から仮駅舎着手 JR東日本の飯田橋駅」
『建設通信新聞』、2015年7月15日 - 東日本旅客鉄道株式会社「より安全な駅ホーム・踏切の実現に向けた取組みについて」
https://www.jreast.co.jp/press/2020/20200407_ho01.pdf 最終閲覧日:2020年9月15日 - 東日本旅客鉄道株式会社東京支社「飯田橋駅西口駅舎2階『史跡眺望テラス』を供用開始します」
https://www.jreast.co.jp/press/2021/tokyo/20210615_to01.pdf 最終閲覧日:2021年6月30日
更新履歴
- 2020/09/17 投稿
- 2020/11/20 移設直後の様子「新ホーム」に追記
- 2020/12/23 移設直後の様子「新ホーム」を修正
- 2021/06/30 内容「外堀跡への配慮」、移設直後の様子「新ホーム」に追記